電気代はかせ >> 電気の仕組み・基礎知識 >> 静電気を防ぐには?
静電気と言えば、おそらく誰もが秋の終わりごろから冬場にかけての季節に静電気を実際に体感した経験をお持ちの方が多いのではないでしょうか?
例えばセーターなどの洋服を脱ごうとした瞬間や、部屋の扉のドアノブや自動車のドアノブなどに手をかけた瞬間。
また友達と手が軽く触れた瞬間などに「バチッ!」と強い静電気を受けるケースは多くあるものです。
私たちは静電気を受けると瞬間的に強い反応を示し一瞬だけ痛みも感じます。
夜間の暗い時間帯であれば、実際に目視でも確認できる程度の静電気の火花が見えることもありますが、この静電気の電圧は、たかが静電気と侮ることはできないほどに巨大な電圧を持っていることをご存知でしょうか?
私達が普段の生活の中で受けているこの静電気が生み出す電圧は実に「3000V~4000V」という巨大な電圧を持っております。
日本の一般家庭用コンセントは電化製品にあわせて原則100Vが基本となっておりますから、この電圧がいかに大きな電圧であるかがわかるかと思います。
電圧の比較(豆知識)
★一般家庭用コンセント⇒100V(日本)
★静電気が生み出す電圧⇒3000V~4000V
では、なぜこのように物や人と触れ合った瞬間に静電気が発生するのでしょうか?
ここではまず静電気が発生する原因について確認しておきましょう。
静電気の生まれる仕組みを確認する解りやすい事例では、ガラス棒と絹布をこすり合わせる実験が有名です。
ガラス棒と絹布をこすり合わせると、ガラス棒の表面にある電子は絹布へ移動し、ガラス棒はマイナス電子を放出した為プラスの電気を帯び、絹布は多くのマイナス電子を受け取りマイナスの電気を帯びるようになります。
このように異なる物質を擦り合わせると容易に電子が移動し双方の物質内にはプラスかマイナスの電気が偏った状態で帯電するようになります。
偏った電子を持つ物質は、電気の影響を受け他の物質を引き付けたり反発して遠ざける等の反応を示すようになりますが、この物質に滞留している電気が「静電気」と呼ばれるものです。
私たちの日常生活の中で一番静電気に悩まされるのは、やはり衣類を脱ごうとする時に発生する静電気です。
セーターやフリースなどを脱いだ瞬間にバチッ!っと静電気が生じる原因もまた前述したガラス棒と絹布のように電子の移動が生じたことが原因にあります。
静電気は摩擦によって電子の移動が発生する事によって生まれますが、私達人は通勤や通学、仕事や家事などでも常に衣類を着用したまま行動しますから、衣類は常に擦れあい摩擦を生じている状態となっております。
服・衣類はこの摩擦の繰り返しによって電子が偏った状態で帯電し静電気を発生させる原因となっているのです。
子供の頃、下敷きをこすって頭の上方10センチメートル程度の場所にあてると髪の毛が逆立つ遊びをされた経験をお持ちの方も多いかと思います。
この現象もまた摩擦によって生じた静電気の働きによる現象ですが、下敷きの電荷が大きく偏ってしまった為に物質を引きつける働きが生じている結果です。
髪の毛と下敷きを擦り合わせると、髪の毛の原子が保持する電子が下敷きに移り下敷きはマイナス電子を多く帯電する偏った状態となります。
対して髪の毛側はマイナスの電子を下敷きへ放出したため、プラスの性質を持つようになり髪の毛と下敷きは互いに引き付け合うように働きます。
この結果、髪の毛が重力に逆らって下敷きに吸い付けられるように逆立つようになるのです。
このように静電気が発生する仕組みが見えてくると、目の前の現象もより深く把握することができるようになります。
静電気の発生を防止する対策法は幾つかの方法が存在しますが、ここでは現実的に自分でも行うことが可能な対策方法について確認していきましょう。
静電気対策の基本は大きく「温度」と「湿度」そして「衣類の素材」の3つの観点から対策を行うことができます。
静電気が発生しやすい季節は秋から冬の気温が寒い季節です。
地球の北半球にある日本では夏が暖かく、冬が寒くなりますが、夏場の暖かい季節に衣類やドアノブなどに静電気が発生する事はほとんどありません。
これは温度が静電気の発生に関係しているためです。
静電気は温度が20度を下回ると少しずつ静電気が生じやすい環境が整い始めます。
ですから、25度を下回ることが多い冬場は室温を少しでも高く保つようにすることが静電気の発生防止に繋がります。
静電気は温度だけでなく湿度によっても発生しやすい環境が整います。
静電気の発生条件は前述した温度が25度以下という条件と合わせて湿度が20%~25%以下になると特に発生しやすくなるという特徴を持っております。
逆に湿度が60%以上になると、気温が多少低い場合であってもほとんど静電気が生じなくなります。
ですから冬場の静電気防止対策を行うには、湿度計を準備し室内の湿度をできる限り高く保つように工夫をこらせば良いことが解ります。
自宅で静電気の対策を行う場合は室内の温度をやや高く保ち湿度を高く保つ工夫をすると突発的な静電気の発生を予防できるようになります。
尚、外出先など自分で温度や湿度のコントロールが出来ないような場所で対策を行う場合は、前述した衣類による静電気発生の原因から対策する方法があります。
服や衣類は動くたびに摩擦が生じ帯電が発生する為、摩擦を軽減することは現実的に困難ですが、衣類の組み合わせによって静電気を生じにくい状況を作ることは可能です。
この衣類の組み合わせによる対策方法が可能となる理由は衣類の素材にはプラスに帯電しやすい素材とマイナスに帯電しやすい素材、そして帯電しにくい素材がある為です。
前述したガラス棒と絹布の実験でも紹介した絹や毛皮、羊毛、ナイロン、レーヨン等の素材はプラスの電気が帯電しやすい衣類素材です。
逆にポリエステルやポリエチレン、アクリル、塩化ビニル等の素材はマイナスの電気が帯電しやすい素材となっております。
ですから例えばマイナスの電気を帯電しやすいポリエステル製のフリースを着用し、その上にプラスの電気が帯電しやすい毛皮のコート等を羽織っていると電子の移動が活発になり、静電気が発生しやすい状態となるのです。
その為、衣類によって静電気対策を行う場合は同じ帯電の性質をもつ素材を組み合わせると静電気が生じにくくなります。
尚、「麻」や「木綿」などの素材はプラスにもマイナスにも帯電しにくい素材です。
同系統の衣類ばかりで洋服を選ぶことは現実的には難しいものがありますが静電気対策として覚えておいて損はありません。